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2020.02.25

「デザイン思考」による学習デザインの問題点

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学習者の興味を引きつけ、積極的かつ柔軟に学習できるような環境を用意するには、デザイン思考に基づくアプローチが必要だという考え方があります(たとえばこの記事を参照)。

しかし、学習の専門家であり、業界に対する辛口の批判で知られるDonald Clark氏によれば、デザイン思考によるアプローチの場合、表面的なデザインを重視するあまり、学習科学に基づく適切な学習デザインがおろそかになる側面があるようです。今日はこのDonald Clark氏の考えを紹介します。

 

 

デザイン思考のプロセスとそれを学習デザインに適用する際の問題点

 

共感(empathize)

デザイン思考の共感フェーズでは、ユーザーが何を求めているかをユーザー自身に尋ねます。

一方、認知心理学の研究では、「学習者は多くの場合、自分自身の学習について正確に判断できない」というエビデンスが得られています。だから、学習者が何を求めているかを学習者に尋ねたとしても、その判断は必ずしも正しくないし、単に学習者の意見に従って学習をデザインしてしまえば、不適切なデザインとなってしまう可能性もあります。学習者の意見は参考にはなるけれども、妨げとなる場合もあります。

問題定義(define)

デザイン思考では、「平均的な」ペルソナを想定しますが、学習の場合は、対象者の分析が必要とされます。

デザイン思考は、学習者の世界やそのビジネス環境を理解するには役立ちますが、デザイン思考を実践している人たちは、こうしたことを理解するのではなく、単なる画面デザインにフォーカスしがちです。しかし、学習に関する問題の多くは単なる表面的デザインの問題ではありません。それがどのような認知的問題に関連するのかを理解し、科学的研究に基づくソリューションを考える必要があります。

概念化(ideate)

学習の問題を解決するには、努力を伴う学習、チャンキング、混合学習、時間をおいた学習など、学習科学についての理解が必要です。しかし、デザイン思考で学習の問題を解決しようとすると、学習科学の理解に基づくアイデアではなく、メディアの制作やプレゼンテーションの表面的なアイデアが中心となってしまいがちです。

プロトタイプ(prototype)

表面的なデザインをプロトタイプ化し、ユーザーのフィードバックを受けるのは簡単ですが、この方法では、真の学習効果を明らかにすることはできません。これには、コントロールグループ、適切なサンプルサイズ、ランダムに選ばれた学習者、長期記憶への記憶の定着を特性すること、学習の転移など、真の調査が必要とされます。ユーザーインターフェイスなどの表面的な部分は、学習の一部でしかありません。

テスト(test)

この場合も、表面的デザインにフォーカスしたテストだけではなく、実際の学習効果もテストする必要があります。学習者は、見栄えのよいメディアで学習すると、それを学習できたと思いこむ傾向にあるので学習者に尋ねる方法は適切ではありません。

 

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デザイン思考は、適切に行えば学習体験のデザインに役立ちますが、デザイン思考を導入することによって、学習環境の表面的な部分にばかり目が向いてしまうことが問題なのだと思います。

 

元の記事:

https://donaldclarkplanb.blogspot.com/search?q=design+thinking

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