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2020.05.28

作業記憶(working memory)の特性を知り、認知負荷に配慮した学習をデザインする

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以前の記事でも紹介したように、人間の意識的思考(つまり学習)が行われる作業記憶(working memory)には、容量や持続時間の制約があり、この制約を超えると認知負荷が過剰となり学習が妨げられます。だから学習をデザインするときには、このような作業記憶の特性を知っておくことが重要です。

今日は、これに関するConnie Malamedさんによる解説を紹介します。

 

作業記憶の基本

  • 作業記憶は、かつては短期記憶(short-term memory)と呼ばれていました。その後、記憶の操作的側面にフォーカスが移ったため、呼び方が変わりました。
  • 作業記憶は、人が情報を操作、処理する一時的なワークスペースです。
  • 脳の特定の場所が、作業記憶の機能を果たしているわけではありません。脳の複数の場所が、その機能に関与しています。

作業記憶の容量

  • 作業記憶に一度に保持できる新たな情報は、4~5個です。
  • 作業記憶の容量を超える情報を同時に処理することは困難です。
  • 作業記憶の容量は、覚える要素の種類や特性によります。たとえば、文字よりも数字、長い単語よりも短い単語の方が作業記憶にとどめやすいものです。
  • 長期記憶から取り出した情報は、作業記憶の容量に影響を与えません。だから、情報を長期記憶に入れることにより、作業記憶の負荷を減らすことができます。

作業記憶の持続時間

  • 作業記憶にある新しい情報は、長期記憶にエンコーディングされるか、やがて消滅します。
  • 作業記憶になる情報は、積極的な注意を向けたり、繰り返したりしない限り10~15秒程度で消滅します。
  • 作業記憶に情報を保つには知的努力が必要とされ、それが認知負荷の原因となる場合があります。

長期記憶との関係

  • 作業記憶と長期記憶の間では、絶えず情報がやり取りされています。
  • 新しい情報の意味を理解するため、長期記憶から作業記憶に情報が想起されます。
  • 注意を払った情報は、自分の知識構造に組み込まれ、長期記憶に移動(エンコーディング)されます。

人による違い

  • 人による作業記憶の容量の違いは、読解やメモを取るといった情報処理タスクのパフォーマンスに影響します。
  • 研究では、情報を短期間保存する能力が劣っている子供は、読み書きに関連するタスクを正常に進めることができないことがわかっています。
  • 専門性のレベル違いが、作業記憶の違いとなって現れます。たとえば、特定の学習方法が、初心者には役立つけれども、エキスパートには妨げとなる場合があります。

認知負荷

  • 認知負荷とは、作業記憶での情報の保存や処理にかかる負荷のことです。
  • 内在的負荷(intrinsic load)とは、学習タスクが本来持つ負荷のことであり、余計な負荷(extraneous load)とは、インストラクションの方法によって生じる好ましくない負荷のことです。
  • 認知負荷理論では、インストラクションの方法が不適切であることによって、余計な負荷が生じ、作業記憶が過負荷になる場合があると言われています。
  • 適切な負荷(germane load)とは、学習者が新たな知識を獲得するときに作業記憶にかかる負荷のことです。この適切な負荷が増えれば、学習が促進されます

 

元の記事:

http://theelearningcoach.com/learning/20-facts-about-working-memory/

 

 

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