これまで学習工学についていくつかの単発記事を紹介してきましたが、少しまとまった記事がありました。以下その概要です。
- 学習工学とは？
学習工学（learning engineering）という言葉は、50以上前に、Herbert A. Simonらによって作られたものです。学習工学は、学習科学、ラーニングテクノロジー、インストラクションデザインを統合したものであり、学習者と学習をサポートするためのラーニングテクノロジーやインフラの開発にあっって、工学デザインの方法論を適用する分野であるといえます。学習工学を体系化し、その発展をサポートする取り組みが、IEEE ICICLEで行われています。
- それはどのように機能するのか？
学習工学とは、新たなラーニングテクノロジーとアーキテクチャーをデザイン、構成、導入するために、工学とシステム思考のスキルと、学習科学と人材開発理論の知識とを組み合わせたものです。学習工学エンジニアには、工学のプロセスと、学習科学、コンピューティングサイエンス、データサイエンスに関する幅広い知識が必要とされます。インストラクションデザイン、AI、マシンラーニング、教育学、成人教育学の理解に加え、学習工学エンジニアには、システムやユーザーエクスペリエンスのデザイン、製品テスト、ポリシー・規制・標準の開発に関するスキルも必要とされます。学習エンジニアは、このようなスキルを活用して学習体験やコース、カリキュラムを作成し、アセスメントの基準を定義し、科学的研究やデータに基づいて教え方や学習を向上させます。学習エンジニアは、要件を把握し、テクノロジー、科学、標準を適用し、ソリューションを実装することによって、学習という分野に工学のプロセスを適用します。
- 誰がそれを行っているのか？
Carnegie Mellon University、University of Missouri、Stanford University、Harvard University、University of Pennsylvania、Boston Collegeなどで、学習工学に関する取り組みが行われたり、専門過程プログラムが提供されています。
- なぜそれが重要なのか？
学習をサポートするインフラやアーキテクチャーが進歩し、テクノロジーに依存するようになるに伴い、学習のためのテクノロジーの開発をサポートし、インストラクションデザイナーや学部と協力してその価値を最大化する上で、工学の専門性が果たす役割が増しています。学習工学のエンジニアには、工学とシステム思考を学習科学に統合し、ラーニングテクノロジーを活用し、学習効果を高めるためのスキルが必要とされます。学習工学によって、再現性、信頼性、持続性の高い教育・学習ソリューションの実現が期待されます。
- どのようなマイナス面があるのか？
学習工学は新興の分野であり、それがどのようなものであるかについての定義はまだ漠然としており流動的です。大学や教育テクノロジー業界がそれを取り入れるにあたって、当初は、混乱が予想されます。また、学習工学エンジニアのために、職務記述や職種を明確化する必要もあります。開発者も研修者も、学習工学のもたらす価値についての教育が必要であり、それを活用する方法を学ぶ必要があります。その価値を完全に認識し、実際に適用、拡張、統合することによってそのポテンシャルを実感するには、時間が必要です。
- 学習工学はどこに向かっているのか？
学習工学は、学問の一分野として発展を続けると考えられます。それに伴い、学習工学の意味、定義、実践に関して、より多くの研究が行われることになると思われます。より多くの研究が行われれば、学習工学の仕組みや方法に関するエビデンスが得られ、学習の効果を高めるという価値がさらに明らかになるでしょう。また、この分野が発展するにつれ、そのためのポリシー、規制、標準が開発されるでしょう。
- 教育や学習にとっての意味合いは？
学習工学は、工学と学習科学の力や特性を組み合わせて、インストラクターや学習者に役立つ、効果的で信頼性の高いテクノロジーを開発することを可能にします。次世代のデジタル学習環境を開発するには、学習工学に基づくスキルが必要です。学習工学は、エビデンスベースのスケーラブルで高品質のソリューションを開発・テスト・実装するための体系的なパスを提供することができます。学習工学の革新的な方法によって、応用学習科学の進歩が促進されます。
元の記事：
https://library.educause.edu/resources/2018/9/7-things-you-should-know-about-learning-engineering
関連記事：
『学習工学（Learning Engineering）：学習科学とテクノロジーの融合』
『学習工学とは』
『学習工学（learning engineering）とテクノロジーの未来』
『学習工学が、インストラクションデザインやEdTechに意味すること』
IEEE ICICLE:
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