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2019.08.19

認知負荷理論を考案したJohn Swellerへのインタビュー その1

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今日は、学習に関するビジュアルデザインの専門家であるConnie Malamedさんが、認知負荷理論の考案者であるJohn Sweller氏にインタビューした内容を紹介します。長いので2回に分けます。

 

2つのタイプの知識

人間の知識には、子供が生活を通じて自然に学ぶタイプの知識(プライマリ知識)と、努力して学ぶ必要があるタイプの知識(セカンダリ知識)の2つのタイプがあります。プライマリ知識の例としては、母語を話したり聞いたりする能力が挙げられます。一方、第二外国語を話したり聞いたりすることはセカンダリ知識であり、これには意識的な学習が必要です。インストラクションデザインで扱うのは当然、セカンダリ知識の方です。

作業記憶(ワーキングメモリ)と長期記憶

人間の意識的思考は作業記憶で行われます。作業記憶の容量は非常に限られており、一度に2~4つ程度の情報要素(elements of information)しか処理することができません(情報要素とは、考えたり、学んだり、問題解決に取り組んだりするときに必要とされる要素のこと)。また、作業記憶には、20秒くらいしか情報を保持しておくことができません。

外部環境から作業記憶に入った情報が適切に処理されると、長期記憶に入ります。長期記憶には容量の制限がありません。インストラクションの目的は、情報を長期記憶に入れることにあります。

外部環境から作業記憶に取り入れた情報を扱うことは、容量や持続時間の関係上、非常に困難を伴いますが、いったん長期記憶に情報が保存されれば、簡単に作業記憶に取り出し、容量の制約なく処理できるようになります。作業記憶を増やす方法はありませんが、長期記憶に情報を蓄えるにつれ、次第に作業記憶の容量が大きくなるとも言えます。

既存知識

人は、自分がすでに知っていることに関連付けて新たな情報を習得します。だから、より多くのことを知れば知るほど、より多くを学ぶことが簡単になっていきます。

認知負荷とは

認知負荷とは、新たな情報要素を複数処理するときに作業記憶にかかる負荷のことです。

学習内容が難しいとは、作業記憶で複数の情報要素を同時に処理する必要があるときのことです。このことを要素間のインタラクティビティ(element interactivity)といい、これは、それぞれの要素が何らかの方法で互いにやり取りすることを意味します。このような場合、単にその要素を覚えるだけでなく、複数の要素について同時に考える必要があるので、作業記憶に大きな負荷がかかります。これが認知負荷です。

たとえば、外国語を学ぶ場合、単語を学ぶときには単語間にインタラクティビティはないので、個別に学ぶことができます。しかし、複数の単語を使って文章を作る方法を学ぶときには、それぞれの単語間にインタラクティビティが生じ、認知負荷が高まります。

 

元の記事:

http://theelearningcoach.com/podcasts/55/

 

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