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2020.03.23

AIではなくIA(知能増幅:intelligence augmentation)について考えよう

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AIを学習に適用することに関しては、学習の自動化から、L&Dの仕事が奪われる懸念まで、多くのことが語られています。テクノロジーを活かした学習のスペシャリストであるClark Quinnさんによれば、真の意味でテクノロジーをビジネスに活用したいのであれば、AIではなく、IA(知識増幅:intelligence augmentation)について考えるべきとのことです。

 

AIについて

AIの研究によって、人の思考を反映したさまざまなモデルが作られ、コンピューティングや認知の研究に役立てられています。

初期のAIでは、「人間は論理的に思考する」という考え方に基づき、エキスパートシステムや問題解決が研究されていました。しかし次第に、「人間はそれほど論理的に思考していない」ことが研究によって明らかになりました。そのため、代替モデルとして、ニューラルネットワークの研究が発達し、マシンラーニングの基盤となっています。

マシンラーニングには、スーパーバイズド、非スーパーバイズドという2つの大きなサブセットがあります。前者は一連のデータをトレーニングしてからAIに判断させ、後者はシステムにデータを与え、そこからパターンを見つけさせる方法をとります。

AIには多くの可能性がありますが、使用したデータにバイアスがあれば、結果も偏ったものになります。

 

IA(知能増幅: intelligence augmentation)について

別の観点として、人とコンピューターそれぞれの強みと弱みを考える方法があります。

たとえば、AIではパターン認識に関する多くの取り組みが行われていますが、コンピューターは人間ほどパターン認識が得意ではありません。一方、コンピューターは、大量の情報を記憶し、決まったパターンの複雑な計算を繰り返し完璧に行うことが人間よりも得意です。

だから、人間と機械それぞれの強みを組み合わせれば、より大きな成果が得られます。これがIA(知能増幅)の目的です。

また、認知に関する研究によると、人間の思考は、それぞれの個人の頭の中にあるだけでなく、ツールや他の人の間に分散しています。だから分散された思考を活用(増幅)する方法を考えれば、複数の人の思考を活用してよりよい結果を得ることができます。

L&Dというコンテキストでいえば、コンピューターに学習を支援させることで人間の能力を増幅させることができます。たとえば、アルゴリズムを使って、個々人に合わせた学習を提供したり(アダプティブラーニング)、最適なタイミングで学習を分散させる(分散学習)ことができます。

パフォーマンスサポート(チェックリストなど仕事に役立つツールのこと)は、コンピューターによって人間の能力を増幅させるもうひとつの方法です。働く人のおかれた状況(コンテキスト)をコンピューター判断し、適切なタイミングで必要なサポートを与えることができます。コンテキストに基づく学習という新たな可能性もひらけます。真のワークフローラーニング(仕事の流れの中での学習)が可能になるのです。

 

 

元の記事:

https://learningsolutionsmag.com/articles/quinnsights-lets-talk-about-ia

Clark Quinn氏による他の記事:

https://www.ipii.co.jp/archives/tag_blog/clark-quinn/

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