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2019.05.17

「脳に基づく(brain-based …)」学習は、事実というより虚構である

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以前に、「脳科学」、「神経科学」に基づく学習であると宣伝されている方法の多くは、実際には「認知科学」の成果によるものであることを説明した記事を紹介しました(認知科学とは、心理学、神経科学、言語学、哲学、コンピューターサイエンス、人類学など、心を理解しようとする学際的な分野のことです)。

今日は、認知心理学の研究者であるDaniel Willingham氏が、ここ数十年の神経科学の成果が教育に適用できるものであるかについて、AFT(American Federation of Teachers)の質問に答えた記事を紹介します。

 

神経科学では、fMRIで脳をスキャンし、本を読むなど、特定の行為によって脳のどの部分が活性化するかが研究されています。脳の画像をみることは面白いことですが、だからと言って、それによって人が適切に本を読む方法に関する情報が得られるわけではありません。神経科学の世界では、脳の仕組みに関して非常に興味深い研究が行われていますが、一般の人がその成果を学習に適用できるようになるのは、まだ遠い先の話です

人の心は複雑なので、教室に適用することができるのは、認知心理学からの知見のみですが、その際にも、十分な注意と計画が必要です。たとえば、認知心理学では、記憶には練習が重要だということがわかっています。だからと言って、学生が完全に何かをマスターするまで同じレッスンを続けるべきだということではありません。このようにすれば、退屈して注意力が低下してしまいます。

一般には、認知システムは相互に作用しますが、研究室での実験は、一度にひとつの認知システムについて調べるよう注意深く設計されています。一方、教える場面では、すべてのシステムが同時に機能し、相互に影響し合います。継続的な練習は、記憶のためには役立ちますが、注意のためにはよくありません。学習の場面で認知心理学の原則を適用するときには、特定のシステムだけでなく、心の働きを全体として考える必要があります。

 

 

長くなるので以降省略しますが、この記事では、以下のような、一般に広まっている考えが誤りであることが説明されています。ご興味があれば元の記事を読んでみてください。

神話1:学校は左脳思考の学生向けに作られている

神話2:学校は女子の脳に適したように作られている

神話3:小さな子供の脳には多くの感覚刺激が必要であり、これにはクラシック音楽が特に重要である

 

元の記事:

https://www.aft.org/periodical/american-educator/fall-2006/ask-cognitive-scientist

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