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2019.07.04

説得のための中心ルート(central route)と周辺ルート(peripheral route)

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学習の場面では、単に知識やスキルを教えるだけでなく、学習者の考え方を変えるよう説得する必要が生じる場合があります。今日は、この説得の方法についての記事を紹介します。

 

ラーニングデザイナーは、学習体験に説得的なメッセージを頻繁に組み入れます。これは、職場のトレーニングが、職場の変化や変革の必要性に基づくものだからです。

たとえば新たなソフトウェアの使い方を教える場合、大抵の人は、それまでのやり方を変えることを望まないので、このような場合には、新たなやり方の方がよいことを示唆するメッセージを暗黙的に含める必要があります。

態度や習慣を変えること自体が学習目的である場合には、さらに明示的な説得が必要になります。

説得は、インストラクションデザインの重要な要素です。ここでは、説得とは何か、説得がどのように機能するのか、人はどのようにして説得されるのかについて説明します。

 

説得の定義

説得とは、「特定のメッセージを通じて、個人の物の見方の根底にある知識や信念、関心などを変えることにより、その人の物の見方を変える相互的なプロセス(Miller, 1980)」であると定義されています。簡単な言葉でいうと、説得とは、他の人の信念や態度、行動を変えようとして行われるコミュニケーションであると言えます。

説得とは、人が自分の価値観や信念を新たな知識に照らして再検討する継続的プロセスです。研究によると、他の人によって情報が伝えられた場合であっても、人は、実際には自分で自分を説得しているのです。

 

説得に至る中心ルート

1986年に、PettyおよびCacioppoにより、影響力のある説得のモデルが発表されました。 これはElaboration Likelihood Method (ELM)と呼ばれ、中心ルート(central route)と周辺ルート(peripheral route)という、情報の受け手側で行われる2つの情報処理ルートが説明されています。

中心ルートでは主に、自分の既存知識と比較して、特定の主張の質に注目し、それを受け入れたり、却下します。このルートでは、個人の認知能力や興味、モチベーションに基づいて、説得のためのメッセージが処理されます。このモデルによると、このルートによって判断した場合、より安定した永続性のある変化が起こるとのことです。

学習者が中心ルートでメッセージを処理する可能性が高い場合には、学習者の職場での経験に関連した合理的なメッセージを使います。 これには、新しいやり方の利点を訴えかけたり、 効率性や生産性が向上する様子を実際に示します。

 

説得に至る周辺ルート

周辺ルートによる説得とは、情報の送り手の信憑性や特性、ビジュアルデザイン、メッセージの長さなど、主となるメッセージをとりまく要素による感情的影響によるものです。周辺ルートを通じて影響を受けた人は、主張の合理性に関してはあまり気にしません。これは、コマーシャルなどの広告でよく使われる方法です。周辺ルートは、永続的変化という点では弱く、安定性がないと見なされています。

学習者が周辺ルートでメッセージを処理する可能性が高い場合には、感情に訴えかけるような説得力のある物語を使います。

 

元の記事:

http://theelearningcoach.com/learning/persuasion-and-learning/

 

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