コラム

日本IBM人財ソリューション株式会社代表取締役 片岡久氏
第9回 仕事の中での気づき

人財育成に関して先進的な取り組みをしている日本IBM人財ソリューション株式会社代表取締役の片岡久氏にお話を伺いました。(インタビュー2012年8月3日、敬称略)
これはその第9回になります。

第9回 仕事の中での気づき

矛盾は宝の山

浦山:片岡さんが仕事をしながら考えてきたこと、気づきや成長に結びついたことなどお聞きしたいと思います。

片岡:私は営業職からきたものですから、お客様とのお付き合いがかなりありました。例えば、IBMと競合になるような会社をお客様として担当することもありました。そうなると、社内ではあまり理解が得られません。競合がお客様ですから。

浦山:なぜそこを助けないといけないのか、といった反応ですね。

片岡:そうですよ。そんな時にいろいろ考えたことが、ある意味自分の働き方の原点になっています。3つあります。1番目は「信じる者は救われる」2番目は「情けは人のためにならず」3番目は「矛盾は宝の山」。これは、すべてシステム思考といいますか、全体をシステムに考えるとこれがベースです。例えば、「信じる者は救われる」は、ポジティブに発信していくこと。世の中はシステムですから、全部つながっています。つながってはいても全部は見えない。我々生きている間におそらく全部が見えることはないと思いますけれども。ただ、思いもしないところからつながりを感じたりすることってありますよね?

浦山:あります。

片岡:それは実はつながっているのが見えないだけの話。ですから我々がどう行動するかによる。やはり返ってくる。ポジティブに行動する、あるいはポジティブに発言すると、ポジティブに返ってくる

浦山:なるほど。

片岡:いわゆる正のフィードバックです。

浦山ポジティブフィードバックですね

片岡:それが「信じる者は救われる」。日本語で言うとそうなります。それから「情けは人のためにならず」、これも似ています。例えば、コンペティターであるお客様をいろいろな形で支援する、その成功のために我々が支援すると、ひいてはコンペティターのコンペティターであるIBMがまた成功していく、そのフィードバックがある。ですから、世の中が本当につながっているのであれば、いいことをすればいい形で返ってくるっていう、それもそのひとつであると。それが「情けは人のためにならず」。やっぱり自分のところに戻ってくる。逆に情けがなければ何も返ってこないということですよ。それから、「矛盾は宝の山」。全体はシステムでできていて、この宇宙なり地球は壊れていない。ですからうまくいっている。

浦山:秩序がある。

片岡:はい、あるのです。でも我々は日常いろいろな形で矛盾を見ます。矛盾があると、それを避けて通ろうとします。あるいは、その矛盾が小さければそれを排除しようとする。大きな矛盾があったりすると、それはちょっと置いておいて、別のところで解決策を見出そうとする。でも、やはり矛盾があるということは、プラスとマイナス、あるいはプラスとプラス、それが拮抗しているから矛盾になる。ある大きなエネルギーがそこにある。その大きなエネルギーが、新しいものを生むベースになる。その大元になっている可能性が非常に高い。そして、その矛盾しているところに着目することによって、新しいものが生まれてくる可能性がある

浦山:そうですね。

片岡:時システムをご提案するときのことです。例えば、お客様にとって在庫がなくなるということは非常に重要なことです。ところが在庫をなくしてしまうとそのお客様がお客様への提供が遅れる、緊急な注文には対応できなくなってしまう。ではどうしたらいいのか。そこを解決しようと新しいプロセスを作る、新しい技術を作るといった原動力が生まれる。そういう意味で矛盾をポジティブに捉える、そこが重要だと思います。

浦山インベンションからイノベーションになる。そこにチャンスがある

片岡:そんなことを考えようとすると、科学の知識、あるいはある専門の知識、それだけではよくなくいろいろなことを幅広く興味を持つことが必要。矛盾を見つけたり、あるいは矛盾している点についてレベルを上げる方法を編み出したりする、そういったところに役立つのではないかと思います。だから専門バカにならないで一般教養を持つ。いろいろな関心を持つっていうことが重要ではないかと思います

浦山:そうですね、大事ですね。どうもありがとうございました。