コラム

ASTD TechKnowledge2012 セッション(大戸寛)

「Gamification – Using Game Mechanics to Enhance E-Learning」 Rick Raymer (NC Bionetwork社)

なぜ人々はゲームに熱中するのか

「なぜ皆がビデオゲームに熱中するのか?」「ゲームを構成する熱中する要素」を概念的に説明し、どんな関係性があるかを示したのが次の図である。

そして、スマートフォンを持つ人間の誰しも一度はプレイしたことがあるであろう「Angry Birds(Rovio)」を実例にとり、なぜ人々はこのゲームに熱中するのかを考察した。

【「Angry Bird」の引き付ける要素の一例】
・ナビゲーションのわかりやすさ
・レベルの構成
・達成感
・すぐわかるフィードバック
・ストーリー性
・エクストラ面

重要なのは取り込みかた

「このようなゲームの様子を、いかにeラーニングに取り込むかが重要である。

まずは「目標」をどう設定するか。「目標」とは、いくつかの単位(このセッションでは「Goal」「Objective」「Topic/Level」「Module/Game」という単位名で説明)で構成し、どういう関係性や難易度を考えるかが重要であると、スピーカーは説いている。

関係性を設計する考え方は「Hub Systems」という表現を使用していたが、インストラクショナルデザインの考え方に相通ずるものがあり、特にCRI技法に近い感覚を抱いた。
※インストラクショナルデザインの一つ

またゲーム(学習)の流れの中での難易度バランスを考えるのも重要で、チャレンジャブルなステージ/面(学習/課題)を与えすぎてもついてこられなかったり、経験値稼ぎのような状況を多くしても退屈な状況を生み出してしまいドロップアウトしてしまう。それらのバランスを流れの中でうまく与えることが、のめり込むためのポイントである。これらの要素はゲームだけでなく、eラーニングそして集合研修や仕事に対しても共通する概念であると感じた。

「Building E-Learning That People Will Want to Use」Mark J Rosenberg (Mark Rosenberg and Associates社)

このセッションでは、ラーニングコンテンツを作成するためのポイントを紹介。下記の13のポイントが重要であると説いていた。スピーカーのRosenberg氏は、「Eラーニング戦略(日本訳版:ソフトバンククリエイティブ刊)」の著者である。盛況なセッションで200名が入る会場キャパシティを超え、立ち見が出るほどで、参加者から質問などが活発に行われていた。セッション終了後も個別に質問に並ぶ参加者が印象的であった。

大戸寛(おおと・ひろし)

株式会社IPイノベーションズ ラーニングパフォーマンス事業部3部 部長ASTDグローバルネットワークジャパン会員、SCORM技術者

1990年代中頃より人材育成の世界に入り、研修企画・実施・マネージメント業務に携わる。2004年IPイノベーションズ入社。主にeラーニングやLMSなど、ラーニングテクノロジー業務に従事。垣根を越えた新しい教育を作りたい!座右の銘は「何事もバランスよく考える」