コラム

ASTD TechKnowledge2013 全体概要

2013年1月30日~2月1日にかけて、カリフォルニア州サンノゼで開催されたASTD TechKnowledge2013。
今年は3日間の会期中に約126のセッションが開催された、展示会にも74社の出展があった。
TechKnowledgeでは、毎回、参加者が交流できるような仕掛けがされている。初めて参加する人達向けに「Newcomers Orientation」、会場で参加者同士が会話しながら食事が取れる「Continental Breakfast」「Meet-to-Eat」、米国以外からの参加者向けの「International Breakfast」などが開催された他、今年は新たに展示会場でドリンクやスナックを提供する「EXPO Reception」が開催され、和やかな雰囲気に包まれていた。

 
トレンドのキーワードは「Conversation」
今年のメインテーマは昨年同様「LEARNING TECHNOLOGY APPLIED」。これは固定のテーマなのかもしれない。

キーワードとして発信されていたものは、
・Conversation(会話・対話)
・データの蓄積と分析
・Meaning(意味)とAccomplishment(達成)
などが挙げられる。

特に「Conversation」という表現は、基調講演を始めいろいろなセッションで使われていた。ネットワークを通じた様々なツールによる「コミュニケーション」が、ラーニングテクノロジーの進化によって容易に、かつ日常的になってきた。それと同時に、もう一歩踏み込んだ内容としての「対話・会話」の促進が、ジェネレーション・環境を越えた「将来のラーニング」を進めていく上での重要ポイントとなっていく。そんな示唆を与えてくれたのではないか、と感じた。
新たな試みとしては注目したいのは、eラーニングの新規格として検討されている「TIN CAN」。この考え方や手法についてのセミナーは複数開催されていた。まだ発展途上試みだが、これからどうなっていくか楽しみだ。「TIN CAN」ついてはセッションレポートで詳述する。

 
バーチャルクラスの効果的活用が増加
今年のセッションは、前年とほぼ同様の5つのトラックにカテゴライズされていた。
唯一、「Platforms & Authoring Tools」が「Platforms & Tools」に変わっていたが、これはSNSやコミュニケーションのための様々なツールの紹介を含めた、ということか。

・E-Learning Design
・Implementation Strategies
・Platforms & Tools
・Emerging Technologies
・Virtual Delivery & Facilitation

全体としては、前年同様、eラーニングをベースにした最新技術・事例・ツールを紹介するセッションや導入・運用に関する考え方・戦略を説明するセッション、実際の操作方法・テクニックなどをワークショップ形式で体験するセッションに分類されていた。決してテクニカルな内容に留まらず、テクノロジーや理論を活用するためのポイントやヒントなども交えた、実践的な内容になっていたことが印象的だった。
今年の特徴は、バーチャルクラスを効果的に運用するためのポイント・Tipsを説明するセッションが多かった点。日本でも大学・学術組織でバーチャルクラスでの運用をしているところがあるが、アメリカではその国土・文化もあり、多くのバーチャルクラスが運用されている。そういった背景もあり、非常に実践的な内容になっていたと感じる。

 
展示会ではキャラクターが活躍
展示会には、オーサリングツールやLMSのベンダー、制作・コンサルティング企業など約90社が出展し、活況を呈していた。今年は、キャラクターメインのコンテンツを提案しているベンダーが見られた。ArticulateのStorylineのように、素材としてキャラクターが準備されていたりと、キャラクター(イラスト・3D)を使用したコミックテイストのコンテンツがトレンドなのかもしれない。

 
シリコンバレーのバスツアーでIT聖地巡り
サンノゼと言えばシリコンバレー、世界の名だたるIT企業が軒を連ねる「ITの聖地」とも言える場所。このロケーションを最大活用して行われたのが、オプショナルツアー「Corporate Campus Tour」だ。
その名を知らぬ者は無いと言っても過言では無い、「Linkedin」、「Adobe Systems」、「facebook」の3社を訪問し、オフィス見学・教育担当者とのディスカッション・お土産付きといった至れり尽くせりのバスツアーだった。
どこの企業も敷地・施設とも段違いの大きさなのは、言うまでもない。社員の皆さんが広いワークスペースで楽しそうに過ごしているのが印象的だった。
今回訪問した各企業では、迎えてくれたご担当者が自社の人材育成について話してくれた。Linkedinではプレゼンテーションとして、facebookではディスカッション形式。特にfacebookでは、参加者からの数多くの質問に回答してくれた。参加者は短いながらも非常に充実した時間を過ごすことができたのではないかと思う。
そして、どちらの企業でも出てきたキーワードが「Conversation」。最新テクノロジーをベースに先進的なサービス・ツールを提供してくれる最先端企業が、「会話・対話を重視する」というスタンスが示唆するものとは一体何だろうか。

 

レポート報告:
大戸 寛:ラーニングパフォーマンス事業部3部 部長
田辺健彦:ラーニングパフォーマンス事業部 シニアマネジャー
黒澤智隆:ラーニングパフォーマンス事業部