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2024.07.05

IPIニュースレターvol.13: 生成AIを使って行動変容をもたらすには?最新論文に基づく行動科学的方(2024/07/05)

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以前のニュースレターにも書いたように、職場の研修で学んだことの実環境への適用率は低く、それを向上させるための方法として行動科学に基づく方法が模索されています。
学習は、知識・スキルの習得、学んだことの適用というように、段階を経て進められていくものですが、その最終的な目的は、学習によって行動が変化すること、つまり行動変容です(IPIブログ参照)。通常、行動変容をはかる場合には、行動科学に基づいて介入方法が検討されます。しかし現状では、学校や企業の学習プログラムに行動科学はあまり活用されていません。

 

『人はどのように学ぶのか?(How Humans Do (and Don’t) Learn)』

科学的な方法に基づく学習やそれを促進するテクノロジーに関する研究者であるDr Philippa Hardman氏は、最近発表された行動変容に関する論文(『Determinants of behaviour and their efficacy as targets of behavioural change interventions』(PDFです)に基づき、職場の学習にこの論文の成果を適用するための調査を行い、具体的な方法や生成AIの活用を提案しています。

この論文は、さまざまな行動変容についての研究をメタ分析したものであり、多くの分野について、どのようなタイプの介入が行動変容につながるかが検討されています。これによれば、全般に最も効果が高いのは、その行動へのアクセスしやすさ(その行動をとりやすくすること)や、社会的サポート行動の習慣化であり、行動に関する知識や、その効果への信念(効果への期待や予測)などは効果が低いとされています。

 

行動科学に基づく学習デザインとは?
Hardman氏によれば、学習により行動変容を促すには、コンテンツ(知識)を中心とする従来の方法ではなく、1) その学習内容が適用されるコンテキスト(習慣、環境など)に注目し、2) 短期的な学習から長期的な学習へとシフトする必要があります。つまり、回数の限られた研修で特定の行動に関する知識を伝授し、その場で研修後の適用を呼びかけるだけでは不十分なので、その行動が定着するための仕組みを用意し行動を促していく必要があるのです。

 

研修効果を高めるためのポイント

1. 実際の適用を練習する
当然ながら、理想的な行動についての情報や理論を知っただけでは、必ずしも実際にそれができるとは限りません。実際に練習する機会を設けることで大幅に学習効果が向上します。

2. 長期的なトレーニングとサポート
研修後に実際の適用を促すフォローアップを行ったり、適用状況を確認するミーティングやパフォーマンスレビューを行いフィードバックを与えると効果が高まります。このとき一回限りでは効果が低いので定期的にレビューを行います。

 

実際の改善例
このHardman氏の記事には、通常の職場の学習のやり方を行動科学に基づく最適なソリューションにした場合の効果が示されています。その一部を以下に紹介します。

リーダーシップ研修
一般的な方法(効果低い):オンラインまたは対面式で説明する形式の研修。繰り返し学習したり、実際にやり取りを行う方法はとられない。
ベストソリューション:リーダーの役割を交代で担ったり、上位者がメンタリングを行ったり、実際のプロジェクトに取り組むことを通じてリーダーシップを実践する方法

営業向けの製品研修
一般的な方法(効果低い):ウェビナーで新機能を説明するのみ。フォローアップはなし。
ベストソリューション:パーソナライズされた学習パスに従い、継続的なスキルアセスメントを行ったり、実際の営業シナリオに基づいて新機能を紹介しフィードバックを得たりする没入型プログラム

上記いずれの場合も、ベストソリューションでは大幅な学習効果の向上がみられています。

 

生成AIの活用
Hardman氏は、早期から生成AIが教育にもたらす可能性に気づき、それを教育に活用する方法を模索している研究者の一人でもあります。この記事では上記を実現するための生成AIの活用に関して以下のような方法が示されています。

●学習のパーソナライズ:個々人の職務上のタスクと必要スキルを生成AIにインプットし、学習目標、コンテンツ、練習&フィードバックなどを提案させます。

●メンタリングプログラム:継続的なサポートの一環として、生成AIを相手に定期的にピアメンタリングを行います。

●モニタリング&パフォーマンス:生成AIを使って学習・パフォーマンスのデータを分析し、詳細なフィードバックレポートを生成させます。

このHardman氏の記事には、上記を生成AIで行うためのプロンプトの例も示されており参考になります。