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2025.02.28

IPIニュースレターvol.19:生成AIを活用した5万人規模の教育プロジェクトとは?

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IPIニュースレターvol.19:生成AIを活用した5万人規模の教育プロジェクトとは?

 

教育の世界への生成AIの活用は、着々と進んでいるようであり、このところ、その実際の活用例について目にすることが増えています。今日はその中で、OpenAIとカリフォルニア州立大学(CSU: California State University)による大規模な共同プロジェクトを紹介します。

 

この教育プロジェクトの概要

OpenAI and the CSU system bring AI to 500,000 students & faculty

 

米国最大かつ最も多様性に富む公立4年制大学システムとして、カリフォルニア州立大学は、これまでも常に革新的な教育改革に取り組んできました。今回のプロジェクトは、AI技術を活用し、全学的な学習体験の向上と、未来のAIリテラシーを備えた人材育成を目的とし、業界をリードするAI教育システムを構築するものです。

カリフォルニア州立大学では、その23のキャンパスすべてに教育専用にカスタマイズされたOpenAIの生成AI「ChatGPT Edu」を導入しつつあります。これは、約460,000人以上の学生と63,000名以上の教職員に対して、最新の生成AI技術を教育現場に導入する世界最大級の試みです。

これにより、学生は、パーソナライズされたチュータリングや学習ガイドを受けられるほか、教職員は、授業準備、資料作成、事務作業の効率化を図るためのツールとしてAIを利用し、教育本来の指導活動により多くの時間を充てることが可能になります。

 

ChatGPT Eduとは?

このプロジェクトに使用されるOpenAIのChat Eduは、教育機関向けにカスタマイズされた生成AIであり、大学全体で安全かつ効率的に利用できるように設計されています。各キャンパスごとに独自の実装計画が策定され、情報セキュリティやプライバシー保護にも十分配慮された環境で全ての学生・教職員が利用可能であり、コスト効率の高い価格設定が特徴とのことです。

 

ChatGPT Eduの活用方法

学生は、チュータリングや情報検索、学習ガイドの自動生成機能により、従来の教科書やオンライン資料に加え、最新の知識を即座に取得できます。教員は、カリキュラムの改善や授業資料の自動作成、さらに管理業務の自動化により、業務効率を大幅に向上させることが期待できます。

また、CSUでは、学生・教職員向けに無料のトレーニングプログラムや認定制度を提供し、誰もがAIスキルを身につけられる環境を整えたほか、AIを活用したインターンシップや業界との連携を通じ、卒業後のキャリア形成に直結するスキルも養うとのことです。

 

今後の展開と課題

今回のCSUとOpenAIの連携プロジェクトは、教育現場に生成AIを大規模に導入することで、学習効果の向上、教職員の業務負担軽減、さらにはAIリテラシーの向上を目指すものです。個々の学習者に合わせた学習環境や、未来のAI人材育成へ取り組みは、今後の教育界に大きなインパクトをもたらすはずです。同時に、倫理面や運用体制の整備といった課題にも注力しながら、持続可能な教育システムの実現が期待されています。

 

参考記事:『OpenAI targets higher education in the U.S. with ChatGPT rollout at California State University』(Reuters)

CSU Announces Landmark Initiative to Become Nation’s First and Largest AI-Empowered University System』(CSUによる発表)