
インターネットが発達する一方、仕事に必要とされる情報やスキルの変化が激しくなったことにより、職場で自律的に学習することが求められるようになっています。これは「パーソナライズされた学習(personalized learning)」とも呼ばれています。今日はこの自律的学習の問題について解説した記事を紹介します。
スマートフォンやタブレットが普及したことにより、誰もが自分の都合のいいタイミングで自分に必要とされることを学習できるようになっています。しかし、Deans for Impactの創立者・常務取締役であり、教育に関する研究者であるBenjamin Rileyによると、この個人のペースに合わせて行われる自律的学習は、誤った仮定に基づいているとのことです。
誤った仮定1: 人は自分の学習を自分でコントロールできる場合に、より多くを学ぶ
Rileyによると、新たなことを学ぶには、その基盤となる既存知識が必要とされるので、この考え方は誤っています。十分な既存知識がない人は、重要なポイントを自分で判断したり、教材の正確性を判断したり、矛盾した情報があった場合に適切に判断できないので、独力で学ぼうとしても、適切に学べない可能性があります。一方、ある程度以上の既存知識があれば、こうしたことの判断ができるので、独力で学んでいくことができます。
誤った仮定2: 人は学習のタイミングを自分でコントロールできる場合に、より多くを学ぶ
学習効果があるには、その学習に困難が伴う必要があります。しかし、私たちの脳は怠け者であり、困難を避けようとする傾向があります。また、人間には判断のバイアスがあり、自分にとってわかりやすいものを選んでしまう傾向もあります。
人間にはこのような傾向があるので、学習に関する選択を学習者に任せっきりにしてしまうと、必ずしも学習のために最適な方法を選ぶとは限りません。また、学習を後回しにしてしまう可能性もあります。
大人は自律性を必要とする
大人には、自分の行動を自分でコントロールしたいという根源的な欲求があります。しかし、職場の学習を個人の判断のみに任せてしまうと、期待される知識やスキルを得ることができない可能性があります。だから職場では、学習の専門家が、組織としてのニーズを把握し、学習者の意向を尊重しつつ、学習をサポートしていく必要があるのです。
元の記事:
https://www.td.org/insights/what-do-you-know-is-personalized-learning-the-answer
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