
職場の学習に携わっている人であれば、「70:20:10の法則」という言葉を聞いたことがあると思います。今日は、この「70:20:10」という数字の意味を解説しているブログを紹介します。
この「70:20:10」という数字の根拠として最も多く挙げられているのは、Center for Creative LeadershipでMcCall、Lombardo、Morrisonらが行なった調査『Lessons of Experience』(1988, Lexington Press)だそうです。しかし実際には、この著作には「70:20:10の法則」についての記述はなく、その後、Lombardoらがまとめた『Career Architect Planner』 (1996 Lominger Press)において、成功したリーダーの学びが、以下のような割合と方法で得られていると述べられているそうです。
- 70パーセントが、困難な仕事から
- 20パーセントが、他の人から(ほとんどの場合は上司)
- 10パーセントが、研修コースや読み物から
その後、DeakinPrime社のKajewskiおよびMasden (2012)により、70:20:10の法則の起源が調査され、以下のように結論付けられています。
「今回の調査では、70:20:10の法則を実証するデータがないことが明らかになった。このソースは、出典として頻繁に引用されているが、その起源として確かなものではない。」
つまりこの「70:20:10」という数字は、単なる概念的、理論的モデルであり、職場で行われる学習の実際の割合を示しているわけではないのです。この数字は、「職場の学習の多くが、実際の仕事を通じて行われている」というほどの意味で使われているようです。
確かに、職場の学習で研修(70:20:10の「10」に相当)が占める時間的割合はそれほど多くないかも知れません。だからと言って、それが仕事のパフォーマンスに与える影響も小さいかというと必ずしもそうではありません。このブログの著者によれば、
「適時に行われる適切な研修は、大きな成果をもたらす」
とのことです。
ここで紹介した記事へのリンク(ATDのScience of Learning Blog):
https://www.td.org/insights/70-20-10-where-is-the-evidence
学習に関して広まっている誤った考え方についての記事:
『学習スタイルの神話(learning style myth)』
『「脳に基づく(brain-based …)」学習は、事実というより虚構である』
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