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2024.10.04

IPIニュースレターvol.15:教育への生成AIの活用がいよいよ本格化か?(2024/10/04)

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最近、生成AIは一時的なバブルであり、その熱が冷めつつあると語られることが増えています。確かに、投資対象としてのバブル的な側面はあるかもしれません。しかし、その裏側では、生成AIの性能向上や実践的な活用に向けた取り組みが着実に進んでいます。教育・学習の分野においても、AIが、個別最適化された学習を提供したり、対話型学習をサポートすることにより、学びの質を高めるだけでなく、教師の負担を軽減し、創造的な教育に集中できる環境を作り出しています。これより、教育はより効果的で身近なものへと進化しつつあります。

今回は、教育と生成AIに関する最新の研究やいくつかの動向をご紹介します。

 

『AI家庭教師はアクティブラーニングよりも効果的(AI Tutoring Outperforms Active Learning)』

生成AIの進化により、教育のあり方が大きく変わろうとしています。最近発表されたハーバード大学の研究(Kestin et al. 2024)によれば、生成AI家庭教師を使った学習は、従来型アクティブラーニング(一方的な講義を聞くより効果的であると言われてきた方法)と比べ、2倍以上の学習効果があり、より短時間でより多くの知識を習得できたとのことです。これは、たとえアクティブラーニングであっても、一人の教師が大勢の学習者に対応する場合は、必ずしも一人ひとりに十分なサポートを与えられないためであると考えられます。一方、AIチューターであれば、すべての学習者に対し、個々人のペースに合わせ、適時にフィードバックを与えることが可能です。

また、AI家庭教師は、知識だけでなく、エンゲージメント(学習への没入感)モチベーション学習体験の楽しさ成長志向のマインドセット(Growth Mindset)といった、学習効果を高める上で重要とされる側面でも効果を発揮しており、効果的な学習ツールとしての可能性を垣間見させます。

このように、教育への生成AIの活用は、単なる一時的なトレンドではなく、学習の質を大幅に高める可能性を秘めており、今後の展開が期待されています。

 

参考文献(この研究について解説した記事):

Students Learned Twice As Much With AI Tutor Than Typical Lectures

 

OpenAI、教育分野でのAI利用拡大に向けて元Coursera幹部リア・ベルスキー氏を採用

OpenAIでは、元Coursera幹部の リア・ベルスキー氏を教育部門の初代ジェネラルマネージャーとして採用したそうです。氏は今後、今後はOpenAIの製品をより多くの学校や教育現場に導入するための取り組みを主導するとのこと。

 

AI人材育成、教育の「民主化」を目指し、OpenAI・テスラの元AIエンジニアがAI学習スタートアップ「Eureka Labs」を設立

OpenAIとテスラの元AIエンジニアとして知られるアンドレイ・カーパシー氏は、AI学習スタートアップ「Eureka Labs」を設立しました。このEureka Labsは、AIと教師が協働して学生に個別最適化された教育を提供することを目指しています。

 

OpenAIにしろ、このスタートアップにしろ、生成AI関連企業が教育への取り組みを強化しつつある様子がうかがえます

 

ハローワークに生成AI 求人・求職マッチング精度向上へ – 日本経済新聞

“厚生労働省はハローワークのサービスで生成AI(人工知能)導入に乗り出す。対話型AI「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米企業オープンAIをアドバイザーに起用した検討プロジェクトチーム(PT)を発足する。企業と求職者のマッチングの精度や効率を高める。”         とのこと。

 

いずれは、AIによって新たな仕事の需要を探り、それに対応する人材をAIを使って育成するようになるのかもしれません。