
最近では学習の世界でもデータが活用されるようになっています。しかし学習心理学の研究者であるPaul Kirschnerさんによれば、ラーニングアナリティクスの適用例の多くには、基盤となる確実な学習理論が欠けています。だから以下のような問題が生じる可能性があります。
- 教育が簡単にモデル化できる単純なプロセスであるという近視眼的見方をしてしまう
- 豊富なデータに基づいているけれども理論に基づいていない意思決定や介入が行われてしまう
- 意思決定や介入が、誤った/無効な変動要因に基づいて行われてしまう
- 意思決定や介入が、因果関係ではなく相関関係に基づいて行われてしまう
- 上記4つによって、意図しない/望ましくない影響が出る(型にはまった狭い見方、分類、ステレオタイプ)
Kirschner氏によれば、こうした問題が生じるのは、ラーニングアナリティクスを導入するときに、教育や学習に関する科学的知識を持った人が関与しておらず、適切な学習理論に基づいた実装が行われないからです。理論的基盤を持たない人たちだけで学習データを分析しようとしても、根拠のない自説をサポートするデータばかりに注目してしまう危険があるのです。
ラーニングテクノロジーのトレンドについて語られる場合も同様です。学習にテクノロジーを取り入れるときの教育科学的側面については深く考えないまま未来を予測している場合が多くみられます。一般に未来予測というのは専門家であっても難しいものなので、未来の姿が安易に宣伝されているときには注意が必要です。
元の記事:
※このサイトに掲載されている一連の記事は、オリジナルの記事の全体または一部の概要を紹介するものです。正確なところはオリジナルの記事をご参照ください。