コラム

ASTD ICE 2012 全体概要

2012年5月6日~9日に米国コロラド州デンバーで開催されたASTD2012 International conference and Exposition(ICE)。76カ国から9,500名の参加者、360社の展示とセッション。まさに世界最大級と呼ばれるに相応しいイベントであり、昨年以上に活気に溢れていた。ここでは、世界最先端の実践事例や組織・人材開発のあり方に触れることができる。
今年のテーマ、基調講演、セッションについて紹介しよう。

メインテーマは、「新しいことを学び、並外れたことを成し遂げる」

今年のメインテーマは、「LEARN SOMETHING NEW, PERFORM SOMETHING EXTRAORDINARY(新しいことを学び、並外れたことを成し遂げる)」。
発信されたキーワードとしては、
  ・イノベーション
  ・モバイル・ラーニング(M-learning)
  ・ソーシャル・ラーニング

「イノベーション」については、開催2日目と3日目のジム・コリンズ氏とジョン・カオ氏の基調講演で、それぞれの考え方・表現で語られたのが非常に印象的・かつ衝撃的だった。特にジョン・カオ氏がピアノでJazzの名曲「All The Things You Are」を奏でながら説く「ジャズ」とイノベーションの関係、「自由」と「規律」をインプロバイズが結びつけて「イノベーション」が生まれる、という話は感動で身体が震えた。

一方、「モバイル・ラーニング」「ソーシャル・ラーニング」については、ASTDでもここ数年フォーカスされてきたが、CEOであるトニー・ビンガム氏のプレゼンテーションでも「モバイル・ラーニング」の必要性を強調されていた。中でも「今からモバイルを考えるなんて既に遅すぎる。すぐにでも始めるべきだ」というメッセージは、無視しては通れない段階になったと言えるのではないだろうか。

セッションのキーワードは、「リーダーシップ」

今年のセッションは、8つの「コンテント・トラック」と3つの「インダストリー・トラック」の2つにカテゴライズされていた。全体を通してみると、「次世代に求められるリーダー像」「現在のリーダーの後継者育成をどのように進めるか」といったリーダーシップに関するセッションの数が多かったように思う。また、「Global Human Resource Development(グローバル人材開発)」や「Sales Enablement(セールスの有効化)」のように新規に登場したトラックも見られ、社会的背景や人材開発の潮流が日々変化していると感じた。

【内容別分類(8カテゴリー)】
1.キャリア開発 Career Development
2.学習をデザインして促進する Designing and Facilitating learning
3.グルーバル人材開発 Global Human Resource Development
4.ヒューマン・キャピタル Human Capital
5.リーダーシップ開発 Leadership Development
6.ラーニング・テクノロジー Learning Technologies
7.測定、評価、ROI Measurement Evaluation ROI
8.トレンド Trends

【業界別分類(3カテゴリー)】
1.高等教育 Higher Education
2.行政 Government
3.セールスの有効化 Sales Enablement

すべての時間帯に同時通訳(日本語、中国語、韓国語)セッションがあるため、毎日問題なくセッションに参加することができ、セッション時に疑問に思ったことは、終了後に通訳の方へ質問することも可能だ。

今年のICEでは、普段からeの付く業務に従事していることもあり、「Learning Technologies」に関するセッションに的を絞って参加していたが、傾向としてはここ近年強く発信されている「M-learning」、「ソーシャル・ラーニング」というキーワードに関連するセッションが多かったように思われる。

ソーシャル・ラーニングをテーマとしたセッションでは、「Planning, Implementing and Measuring Social Learning and Mentoring at McDonald’s」のように、企業の取り組みの事例を紹介したものや、具体的な運用方法についてのセッションもあり、「実際に使う」ためのアイデアが提供されていた。

また、「セカンドライフ」のような3Dの仮想空間を使用したラーニング環境についてのセッションとして「The Five Superpowers of Learning for the Digital Age」など非常に興味深いセッションも見かけることができた。特に「Recommendations for Designing Learning Events in 3D Virtual Worlds」では、ガニエの9事象を3Dの仮想空間に適用して「ラーニングイベント」をデザインする、といった試みを紹介していた。 
 これらのセッションでは「Gamification」をキーワードに、GenYといった次世代向けのラーニングを追求しようという内容が非常に印象深く感じた。

なお、「Virtual Classroom」や「Webinar」に関するセッションが多いのもICEの特徴で、「The Global Virtual Classroom: 5 Keys to Success」や「Designing and Facilitating Within the Multicultural Virtual Classroom」といった効果的に運営するためのポイントやTips、ファシリテーションなどについて説明していた。

ICE名物はGlobal Villageでの振り返りセッション

会場は非常に広大ではあったが、TechKnowledge同様にスマートフォンやタブレットの専用アプリを駆使して、セッション概要や場所、スケジュールをJust in Timeで確認できる環境が提供されていたため、スムーズな受講ができた。多くの参加者が何らかのモバイルデバイスを携えていたのが印象的だった。

海外からの参加者をサポートし、繋がってもらおうという仕掛けも数多く、ICE名物のGlobal Villageで、海外から訪れた参加者たちが、自国の旗の下で熱心に時間を忘れて情報を共有する姿を今回も見ることができた。また、海外からの参加者を歓迎するレセプションも開催された。

レポート報告:
浦山昌志:代表取締役
鈴木伸学:セールスコンサルティング部 部長
田中美郷:ラーニングパフォーマンス事業部第2部 部長
田辺健彦:ラーニングパフォーマンス事業部 シニアマネジャー