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IPIニュースレターvol.21:生成AI「Claude」は、人間の能力をどう高めるのか?

「人工知能の父」と称されるジェフリー・ヒントン氏は、AIの進歩がもたらす脅威について日頃から悲観的な立場を取っていることで知られています。実際、彼はAIによる雇用喪失や制御不能なリスクについてたびたび警鐘を鳴らしています。しかし教育に関しては、その可能性を楽観的に評価しており、あるインタビューでは、AIチューターの進化によって今後10年以内に学習効果が3~4倍に向上する可能性があると語っています( この動画の17.5~18.5分頃)

これまで本ニュースレターでは、OpenAIやGoogleが提供する教育向け生成AIを紹介してきましたが、今回は、生成AI Claudeで著名なAnthropic社が最近発表した「 Claude for Education」を取り上げます。

Claude for Educationの主な特長

参考資料)「Claude for Education」は、高等教育機関向けに特化したAIツールであり、Northeastern University、 London School of Economicsなどの教育機関と提携し、これらの大学で全学生にアクセスを提供しています。たとえばNortheastern Universityでは、約50,000人の学生、教職員がClaudeを利用し、AIを活用した教育改革を進めています。

学習モード(Learning Mode)の導入
Claude for Educationの中心的な機能である「学習モード」は、学生が自らの思考を深めることを目的としています。このモードでは、AIが直接的な答えを提供するのではなく、学生に対して問いかけを行い、批判的思考を促します。たとえば、学生からの質問に対して直接答えるのではなく、「この問題にどうアプローチしますか?」、「この問題にどう取り組みますか?」、「その結論を支持する証拠は何ですか?」といった問いかけを通じ、学生が自分で考える力を養います。この「学習モード」は、学生がAIと対話する方法を根本的に変えるものであると言えます。

プロジェクトベースの学習支援
Claude for Educationは、特定の課題やトピックに基づいて作業を整理できる「Projects」機能を備えており、学生が「研究プロジェクト」や「キャリアプロジェクト」を通じて、文献レビューや学習ガイドの作成を行うことを支援します。これにより、学生は実践的なスキルを身につけることができ、学びの幅が広がります。

教職員の業務効率化のための機能
Claude for Educationは、学生だけでなく、教職員の業務支援機能も備えています。教員のためには、評価基準の作成、個別フィードバックの提供、化学方程式の生成などを効率的に行う機能、職員のためには、部門ごとの登録傾向の分析やFAQの自動生成などを行う機能があります。

心理的安全性の確保
AIを利用することで、学生は気軽に質問を繰り返すことができ、学習の過程での心理的なハードルを下げる効果が期待されています。これにより、新しい分野への挑戦がしやすくなります。

OpenAIやGoogleと比べた特長
Claude for Educationは、批判的思考や問題解決能力を養う「学習モード」により、問いかけを通じた深い対話による学習を特長としています。一方、ChatGPT Eduは、質問への迅速な回答や大学のニーズに応じたカスタマイズが可能であり、教育機関に柔軟な支援を提供します( OpenAI公式ページ)。GoogleのLearnLMは、Geminiを基盤とした教育特化型モデルであり、Google Classroomでの授業計画支援やYouTubeでの対話型クイズなど、パーソナライズされたアダプティブな学習体験をサポートするほか( Google公式ブログ)、単なる情報提示ではなく 学習を促進するための発見プロセスも重視しています。
尚、Claude for Educationは今のところは提携大学、または “.edu”ドメインのメールアドレスを所有する人のみが使用できるとのことです( 参考資料)。しかし この記事によれば、Claude自体も他の生成AIに比べ、プライバシーへの配慮、対話型の会話スタイル、クイズ作成など教育に適した特長があるとのことです。

今後の発展


Harvard Business Reviewの記事によると、 2025年の調査では、生成AIを学習に活用する人が2024年に比べ急速に増加しています。これまで生成AIは、複雑かつ高度な思考を迅速に行うことで人間の認知的負担を軽減する一方、人間の思考力低下の懸念が指摘されてきましたが、Claude for Educationは、生成AIを使って批判的思考を深め、学びの幅を広げるという、新たな可能性を示しています。AIが教育の質を高め、知的な探究を促す新たな役割を担っていく方向に発展していくことが期待されます。

Written by : ipi