
YouTubeやNetflixなど、世間ではビデオ(動画)が大流行であり、学習にも全面的にビデオを取り入れるべきだという声が聞かれます。しかし、学習の場合、必ずしもエンタメ系ビデオと同様の方法で作っても学習効果が上がりません。学習科学に基づいて作る必要があります。今日はこの点について、学習ビデオ制作に長年の経験のあるDonald Clark氏が解説した記事を紹介します。
ビデオは知識の伝達手段としては不適切
多くの人は、自分の好きな映画の有名なシーンを思い出すことはできますが、そこで語られていた言葉を詳細に思い出すことはできません。それは、ビデオは私たちのエピソード記憶に働きかけるものであり、知識に関しては効果的ではないからです。
ビデオでは多くの情報が流れますが、人が一時的記憶に情報を保持できる時間も量も限られており、長期的記憶に情報を定着・統合させる前に忘れられてしまいます。
ビデオは感情的に訴えかけて態度の変化を促したり、言葉では説明しづらいプロセスや手順、動きを見せたり、マイクロレベルで詳細にみたり、実際には行かれない場所を見せたりする場合に適しています。
ビデオは学んでいるという幻想を生じさせる
研究によれば、人は、ビデオを見ることにより、自分が学んだという幻想を抱きます。しかし上記のような理由により、ビデオをみても必ずしも学んでいるとは限りません。また、研究によれば、人がビデオに集中できる時間は6分程度です。
学習者がビデオをコントロールできるようにする
通常の「進む/戻る/停止」ボタンだけでなく、学習内容の構成や各章のポイントを示すことにより学習効果が高まります。
ナレーションと同じ内容を画面に表示しない
画面に表示されている文章と全く同じ内容をナレーションで読み上げると認知負荷が高まり学習が妨げられます。
トーキングヘッドはダメ
人の顔だけが映ってひたすら話しているビデオ(トーキングヘッドビデオ)はあまり効果的ではありません(ただし話し手が有名人だったりする場合はこの限りではありません)。
大きい画面の方が学習効果が高い
スマートフォンでのマイクロラーニングが普及しつつありますが、残念ながら研究によれば、画面が大きいほど学習効果が高いそうです。
音声の質は画像の質より重要
研究によれば、音声の質は学習効果に大いに影響しますが、ビデオの画質はそれほどでもありません。
結論
学習のための効果的なビデオを作るには、学習に関する研究を知る必要があります。研究は、よい学習の認知的基盤に関して教えてくれるだけでなく、記憶の保持を高めるのに必要とされる適切な推奨事項も教えてくれます。
元の記事:
https://donaldclarkplanb.blogspot.com/2019/11/video-for-learning-15-things-research.html
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