ブログ

  • ホーム
  • ブログ
  • IPIニュースレターvol.24:教育業界に破壊的影響?OpenAIとGoogleの争いから垣間見える教育の未来とは?

IPIニュースレターvol.24:教育業界に破壊的影響?OpenAIとGoogleの争いから垣間見える教育の未来とは?

教育・学習を促進する手段として生成AIが注目を集める一方、生成AIを使用することによる思考力の低下も指摘されています。こうした中、この1ヶ月の間に、OpenAIとGoogleが、学習のための生成AI機能を相次いて発表しました。これは単なる偶然ではありません。この動きは単なる機能追加を超え、教育とテクノロジーの未来を大きく左右する戦略的転換点として注目されています。

OpenAIの学習モード(Study Mode)とは?

この機能は、ユーザーからの質問に直接的に回答するのではなく、ソクラテス式問答に基づく対話を通じ、学習者の思考を促します。リアルタイムのクイズやフィードバックを行い、ユーザーの理解が混乱している部分を特定し、深い理解につながるようサポートします。この学習モードは特に、探究型の学習や複雑なトピックをユーザーが自ら学べるようにすることを目指しており、教育におけるAIの役割を、単なる「回答提供者」から「学習を促進するパートナー」へとシフトさせます。
この学習モードは無料版ユーザーも使用できます。

Googleのガイド付き学習(Guided Learning)とは?

Googleが公開した「ガイド付き学習」も、答えを直接与えず質問によって学習を促進することを目指しています。認知科学に基づくステップごとの体系的学習、図表やYouTube動画を使用した学習、クイズやフラッシュカードの生成、進捗管理機能を特徴としています。
この機能は現在、大学生向けに無料開放されているとのことです。

両者の比較

両者の共通点は、直接回答を避け、学習者の思考を促すところにありますが、それぞれに機能的な特徴があります。
ChatGPTの学習モードは、リアルタイムのクイズやフィードバックなど柔軟性が高く深い対話を促すけれど、テキスト中心の学習である一方、Googleのガイド付き学習は、構造化された構成に従った学習、図表や動画を使った学習を特徴としており、進捗追跡機能もあります。
たとえばこの記事の著者は、探求型の学習者にはChatGPTの学習モード、視覚・構造重視の学習者にはGeminiのガイド付き学習が適しており、状況に応じて両方を補完的に使うことを提案しています。

OpenAIによれば、今後トピックの説明をよりわかりやすく視覚化することも検討しているとのことです。一方、Geminiのガイド付き学習にはまだ不備があるようで、即答したり無関係な質問を投げかけることがあったり、対話の一貫性で劣ることが指摘されています。
現状では、両者それぞれの目指す機能がまだ十分に実現されているとはいえない状況であり、性能や機能に関して早まった判断はできないようです。

教育は大手テクノロジー企業の重要な激戦区となっている

OpenAIやGoogleをはじめとする主要なAI企業は、教育が次なる大きなプラットフォームとなるチャンスであると捉えており、単に教育ツールを作るだけでなく、AIと共存して学ぶインフラとしての地位を確立しようとしています(参考記事)。
教育市場は巨大な成長機会となる可能性があり、若い世代の早期獲得は長期的なユーザー基盤の確保につながります。さらに、単純な情報提供から真の学習支援への転換は、AIが社会に与える価値を大幅に向上させ、教育におけるAI活用に対する懸念を和らげる効果も期待されています。この教育をめぐる生成AI企業の争いは始まったばかりですが、学習者にとってより効果的で魅力的な教育体験の実現という共通目標に向かって競争が激化することは間違いありません(参考記事)。

Written by : 遠藤