お客様事例紹介
兼松エレクトロニクス株式会社様
「今年の新入社員は立ち上がりが早い」と現場から評価される新入社員研修カリキュラム (2/3)

————カリキュラムを具体的に教えていただけますか。

山川:2010年度のカリキュラムはこちらの通りです。

2010年度 兼松エレクトロニクス 新入社員教育カリキュラム

数年間実施と検証を繰り返してきて、配属後にうまく立ち上がるためのポイントがわかってきました。3つ挙げると、

1:新入社員の腹にうまく落とす
2:インプットとアウトプットのバランスをとる
3:現場と接することでモチベーションを喚起する

それぞれについて、詳しく説明していきましょう。

新入社員の腹にうまくおとす

新入社員が吸収しやすい流れで教育カリキュラムを組むということです。いくら品質のよい研修プログラムを個別で用意しても、組み合わせ方を工夫しないと学習効果を高められないことがわかってきました。

「ビジネスマナー&スタンス」「段取り力」「自社グループ事業領域理解」といったそれぞれの学習項目は、研修を企画する側の頭の中では、うまく整理がついていて、それぞれがなぜ必要なのか、どの項目とどの項目が関連し合ってくるかもわかっています。しかし、新入社員の頭の中には最も重要な「全体のつながり」という像がないのです。

全体像がないままに、個別の研修を続けていくと、新入社員は「なぜこの研修が必要なのだろう?」という疑問を持ちます。1度疑問を持ってしまうと、研修の内容を吸収することが難しくなります。また、全体像がないまま、現場に配属してしまうと、その先も苦労するのです。全体像がわかっていれば、抜け穴に気付き、埋めることもできますが、そもそも気付くことができなければ埋めることもできません。自分で不足を補おうとしない新入社員を、上司は「やる気がない」と見なしてしまうかもしれません。それではお互いに不幸です。そのような事態を防ぐために、カリキュラムでは「何を学習するか」だけではなく、「どのような順番で学習を進めていくか」を工夫しています。

特に充実させてきた研修として、4月に行われる「自社グループ事業内容理解」や5月の「顧客業種業務理解」が挙げられます。これらはネットワークやサーバーなどのIT技術の目的に該当します。ネットワーク技術を駆使して、どのようなソリューションをお客様に提供するのか、そのソリューションはお客様のビジネスにどのように役立つのか、それを理解して技術研修を受講するのと、用途や必要性がわからないまま受講するのとでは、吸収度合に大きな差が出てきます。

新入社員教育カリキュラム

また、全体像の理解は、学習意欲にも影響していると感じています。いろいろな知識や技術を断片的に理解するのではなく、全体が見えることで、不足している部分に自分で気付くことができます。そのことにより、自ら補おうという意欲が出てくるように思います。

インプットとアウトプットのバランスをとる

新人研修はどうしても知識の詰め込みになりがちですが、学んだことをアウトプットする機会を意識的に設定する必要がある、という意味合いです。インプットだけ、座学だけの研修はどうしても退屈になってしまいます。インプットとアウトプットを組み合わせることで、研修の理解度が高まると考えています。

当社では研修カリキュラムとは別に「グループ・プロジェクト活動」を設定しています。これは学習した内容を用いて、グループごとに調査、検討活動を行い、アウトプットを発表するというものです。月に1つ、3ヶ月間で3つの課題を用意しました。課題は月を追って少しずつ難易度を上げています。

研修風景



日々の研修と並行して行われるグループ・プロジェクト活動は、配属後に直面するであろう複数業務の並行処理の練習にもなります。ただ宿題のようにやらせるのではなく、PDCAを回す実践の場として、計画やレビューも徹底的に行わせました。おかげさまで、実際の現場の仕事に近い環境で「仕事を回す」ことを体験させることができました。

現場と接することでモチベーションを喚起する

先輩社員と話をする、実際のお客様とそのビジネス内容を知るといった現場に触れる機会は、長期間研修会場で過ごす新入社員にとって大きな刺激となります。その刺激をうまく学習に結びつけるための工夫をしています。

例えば、自社が顧客に提供しているソリューションについて、新入社員がいったん自力で調査をし、仮説を立てた後に、その顧客を担当しているアカウントチームをアサインして、実際のビジネス内容について説明をしてもらっています。新入社員は現場の先輩の体験談に強く興味を持ちます。先輩のエピソードを通じて、今学んでいることが将来の自分の活躍につながっていくことを実感してもらうのです。

そのために、私自身も現場部門との接点を増やし、対話を持つことを心がけました。その結果、技術研修のカリキュラム内容などについては、SE部門のさまざまな方からたくさんのアドバイスをいただくことができました。また、実際のアカウントチームによる自社ソリューションビジネスの説明や、グループ・プロジェクト活動における先輩社員インタビューなどが、恒例行事として協力してもらえるという土台もできあがってきたように思います。

意図をちゃんと説明して協力してもらえると、それは新入社員の成長に確実に結びつきます。先輩のプレゼンテーションに感謝した当時の新入社員が、数年後に後輩の研修に協力してくれるようになりました。今年度の新入社員からも「数年後にあの先輩のように、新入社員研修でプレゼンができるように頑張りたい」という声が挙がっていて、いい循環が生まれつつあることを実感しています。

研修風景

また、研修中に開催されるITコンベンション(展示会)などのイベントも活用しています。ただ見学するのではなく、当社が実際のビジネスでお付き合いさせていただいている主要なベンダー様及びパートナー様などの出展ブースについて、当社との関わりなど見るべきポイントをあらかじめ説明をしておき、目的意識を持って自発的に見学させています。新入社員にとっては、各社様ブースで丁寧かつ温かいご対応をいただくことで、当社のポジションや認知度を肌で感じることができ、うれしく、誇りが持てるようです。当日の研修レポートには「早く成長して、親切に説明していただいた方々に、実際の協業ビジネスで報いたい」というコメントも多くみられました。