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2024.04.12

IPIニュースレターvol.10:生成AIにより実現される未来の学習像がようやく見えてきた!インターネットの普及以来、最大の革命が到来(2024年4月12日)

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一般には、「生成AIは、大量の文章に基づいて、次にくる言葉を統計的に割り出して文章を生成しているだけ」という言い方をよく耳にします。しかし生成AIは、司法試験で優秀な成績をとったり、詩や小説を書くなど、事前に学習させていた範囲をはるかに超える能力を発揮する場合があり、研究者たちも理解に苦しんでいるそうです。生成AIの内部はブラックボックスであり、LLMなどのモデルそれ自体がどのように機能しているかが研究の対象となっているのです。

実際、生成AIは何が得意なのかは実際に試してみなければわからない側面があり、その進化のスピードは速いので、現時点での性能ではなく将来的な可能性を見据えて試行を行い、今後の自分の仕事にどのように活用できるかを考え、備えておく必要があるようです。

 

■生成AIを活用した企業内学習プラットフォームAutonomous Corporate Learning Platforms: Arriving Now, Powered by AI

学習は、生成AIを大いに活用できる可能性のある分野の一つであり、AI技術を使った破壊的影響力のある製品やサービスの出現が期待されています。ラーニングテクノロジーをはじめ、HR分野のアナリストとして著名なJosh Bersin氏によれば、インターネットの普及以降で最大の革命が企業内学習の世界に生じつつありますこの記事では、Bersin氏がそうした製品・サービスの一部を紹介してくれています。このような新しいタイプの学習プラットフォームには以下のようなことが可能であり、最終的には既存のLMSなどの学習用システムがそれに置き換えられていくであろうとのことです。

1.コンテンツをLLMに取り込んで、質問に答えるエキスパートやチューターを作る

2.コース、ビデオ、クイズ、シミュレーションなどを必要に応じて作る

3.学習者の知識やスキルのレベルを適宜判断できるAIチューターやコーチを相手に必要に応じてインタラクティブに学習する

4.学習のパーソナライズ(学習者の行動や必要性を理解した上で、それに基づいてコンテンツを生成し学習させる)

企業やコンテンツプロバイダーには、学習に活用できるコンテンツやデータが大量に蓄積されていますが、その多くは有効活用されていません。企業のHR部門が上記のような生成AI機能を備えたツールを活用すれば、こうしたデータに基づき、個々人が必要とするタイミングで必要とする学習や情報を生成し提供することが可能になります。

また今後は、生成AIによるシステムを活用することにより、インストラクションデザイナーでなくてもコンテンツやコースを作ることが可能になるであろうとのことです(インストラクションデザインの民主化)。

 

■生成AIを活用した学習を行う場合の注意点

生成AIを実際に学習の場面に活用する場合も増えてきていると思いますので、Harvard Business Publishing Educationに掲載されていた、学習にAIを活用する場合の注意点を以下に紹介します。

学習に生成AIを活用することに関して、質問に対するその答えは必ずしも正確ではない、生徒がAIに聞いた答えを丸写しにするなどの問題が指摘されています。しかしAIツールを適切に活用すれば、より効果的な新たな方法で教えることが可能になります。

これにはまず教師側が、AIの得意/不得意を実際に試して把握し、教室でAIを使う環境を整え使用に関するポリシーを設ける必要があります。また、学生には、AIの適切かつ効果的な使い方を学習させます

生成AIの使用ポリシーに含めるべきこと:

  • AIを使っていい場合/いけない場合
  • AIを使った場合にそれを明記する方法
  • ハルシネーションがあることや、AIの出力に対する生徒の責任について明確なルールを定める
  • 倫理的かつ責任を持ってAIを使うこと
  • コンテンツ作成のためだけでなく、学習のためのツールとしてAIを使う必要性の説明

生成AIを使って学習効果を高めるには、以下のことも必要とされます:

  • AIの出力を真似するだけではかなわない高い期待を設定する
  • AIを使って書くためのガイドを与える(参考:https://www.oneusefulthing.org/p/how-to-use-chatgpt-to-boost-your
  • AIを使った場合はそれを明記し、その出力を得るのに使ったプロンプトも提示させる
  • AIの出力に新たな情報を加えたり、ポイントを明確にしたり、正確性をチェックするなど、AIの出力を改善する取り組みを行わせる

 

■生成AIをビジネスに活用するには?

以前のニューズレターで、生成AIを使用することにより、コンサルティング業務のパフォーマンスが全般に向上し、特に低スキル者のパフォーマンス向上度合いが大きいことを示す研究を紹介しましたが、さらに別の研究でも類似の結果が得られたそうです。この研究では、法律を学ぶ学生が法律関連タスクに生成AIを使用したところ、全般としてはそれによってタスクの質はそれほど向上しなかった一方、大幅な時間の短縮がみられました。また、低スキル者のほうが高スキル者よりも、タスクの質の向上幅が大きくなっていました。この場合も生成AIはスキルの底上げに役立つようです。

注意が必要なのは、生成AIは何が得意/不得意なのかは実際に試してみないとわからないことです。上記の研究の場合も、行ったタスクにより微妙に効果の違いがあったようです。これまでのソフトウェアは仕様に従った動作が期待されるものでしたが、生成AIの場合は仕組み上、結果をあらかじめ定義してそれを期待するものではありません。なぜそのような結果が生成されたかのトレースも簡単ではありません。どのような部分に生成AIを活用すると効果的かを知るには試行錯誤が必要とされるのです。